「料理は化学」とも言われるように、お料理は調味料やちょっとした手間で全然違うものへと変化したりします。
長年作っていたものが実は違う料理だったり、家庭や地域によって呼び方が違ったり…料理はそういった部分でも奥深いものですよね。
とくに日本食となると、なかなか改めて誰かに尋ねるのも恥ずかしいこともあるかもしれませんね(笑)。
今回は、同じものなのか、違うものなのか気になる料理の一つ、「お煮しめ」と「筑前煮」についてお話しします。
おおまかなイメージで言うと”同じもののような気もする…”という人が多いのではないでしょうか。
いえいえ、実は「お煮しめ」と「筑前煮」は別物なのです。
その違いについてまとめてみました。
「お煮しめ」と「筑前煮」の違いとは
それでは早速、「お煮しめ」と「筑前煮」の違いについて見ていきましょう。
今回は分かりやすく、二つの共通点&異なる点をどちらも紹介しておきますね。
《お煮しめと筑前煮の共通点》
混同してしまう人が多いということは、少なからず似ているところや共通点があるということです。
まずはお煮しめと筑前煮の共通点から確認しておきましょう。
★「煮物」であること
どちらも名前に「煮」という字が入ることからも分かりますが、煮物であるのは同じです。
さまざまな具材が入ることなども共通する点ですね。
ぱっと見は同じに見えることも多いので、「お煮しめ=筑前煮」(呼び方が違うだけ)と思っている人も多いはずです。
★おもてなしや正月料理として作られることが多い
お煮しめと筑前煮、どちらも日本を代表する煮物のひとつです。
そのため、お正月料理やおもてなしの際などに良く作られ、今や家庭料理やお袋の味としても代表的です。
《お煮しめと筑前煮の違い》
続いては、お煮しめと筑前煮の違いについて挙げていきましょう。
★具材の違い
まずは含まれる具材の違いですが、地域や家庭によっては必ずしもそうではないものの、大まかに良く使われる材料は異なります。
お煮しめは、こんにゃく・お芋・根菜・油揚げ・昆布・しいたけ・たけのこなどが良く使われています。
中でも「こんにゃく」「にんじん」「れんこん」など、「ん」がつく食材は「運」を乗せるといわれ、縁起担ぎとしての意味合いも持ちます。
一方筑前煮は、同じようにこんにゃく・根菜(にんじん、れんこん、サトイモ、ごぼう)などに加え、鶏肉やさやえんどうなどが良く使われています。
しかし地域によっては、どちらも練り物や鶏肉が入ることもあるので、具材だけで判断するのは難しいでしょう。
★味つけの違い
お煮しめは味付けに関して幅が広く、関西では薄いダシを使ったり、関東では塩や醤油を多く使ったり、正月料理にする場合には味付けを濃くしたりもします。
家庭によっても味付けが大きく異なり、いろいろな味があります。
これが筑前煮となると、醤油と砂糖で味付けすることがほとんどです。
味の濃さには差が出るものの、比較的短時間で味をつける方法で煮ることが多いのも筑前煮の特徴です。
★ルーツの違い
名前が違うということは、すなわちルーツも違うということです。
お煮しめというのは「煮しめる」という言葉から来ていて、「煮」「しめる」で、最後まで煮るというような意味の言葉から来ています。
一方筑前煮は、「筑前」という地名が由来しており、福岡県北部や西部の筑前地方からその名がついています。
ですが、現地では筑前煮と呼ばずに「がめ煮」「炒り鶏」などとも呼ばれています。
★調理法の違い
一番大きな違いがコレ!調理法の違いです。
以下にそれぞれの作り方などをまとめています。
それぞれ最も重要になるポイントがありますので、チェックしながら読み進めてみてくださいね。
お煮しめの作り方・手順と調理時間
まずは、「お煮しめ」の作り方・手順・調理時間について見ていきましょう。
《お煮しめの作り方・手順》
具材をひと口大の乱切りにする。
まずは具材を切っていくのですが、基本的には乱切りにするのがオススメです。
特別なものといえば、
・こんにゃくは、手でちぎったり細かい切れ目を入れておくことで、味がしみやすくなります。
・ニンジンは「ねじり梅」という梅形に切れ目を入れておくと、見た目にも美しく縁起も良いものになります。
・ゴボウはアク抜きをしておいたり、サトイモはぬめり取りをしておくなどの下処理をすることで、より美味しく仕上がります。
酒・みりん・砂糖・だしを加えて、沸騰したら20分煮る。
その後全ての食材に火が通るように、中火にして20分程度煮ていきます。
このとき落し蓋をすることで均等に火が通りますので、なければキッチンペーパーなどで対応していきましょう。
火が通りやすい食材や、火を入れすぎると硬くなってしまうような食材に関しては、火の通りにくいものが煮えてから入れるなどして調節してください。
醤油を加えて弱火にし、汁気がなくなるまで煮る。
ここがお煮しめの最大の特徴で、汁気がなくなるまで弱火でじっくり煮ていきます。
「煮」「しめる」という字のごとく、最後まで煮つめるのがポイントです。
煮汁の多さにもよりますが、30分以上は煮るのが一般的です。
《お煮しめの調理時間》
このような手順を踏むために、お煮しめの調理時間は60分ほどと言われています。
下ごしらえに10分、中火で煮るのに20分、弱火で煮るのに30分ほどという計算になりますが、これはあくまで最短だと考えておいたほうが良いでしょう。
ただ、「お煮しめ」の調理方法はこれだけではなく、とあるテレビ番組で紹介されていたのは、各素材を一つずつ煮るというもの。
すなわち、こんにゃくはこんにゃくだけを煮、人参は人参だけを煮る。ゴボウがゴボウだけを….という具合です。
一つのお鍋で一品ずつ調理していき、それぞれ出来上がったものを一緒に盛るのが「お煮しめ」という説もあります。
これだと、一素材ずつの調理になりますので、最低でも3時間~半日・一日がかりということもあるそうです。
筑前煮の作り方・手順と調理時間
続いては、筑前煮の作り方・手順、調理時間について解説していきます。
《筑前煮の作り方・手順》
具材をひと口大の乱切りにする。
こちらも同じく乱切りにするのですが、イモ類は事前に下茹でしておくと良いでしょう。
この時、干し椎茸を使うのであれば、戻し汁を煮る時に使うとより美味しくなります。
具材を油で炒める。
ここが筑前煮の最大の特徴で、具材を油で炒めていきます。
まず鶏肉をサッと炒め、根菜など火の通りにくいものをくわえ、最後に椎茸やサトイモなど、短時間で火が通るものを炒め合わせます。
油で炒めることで、香ばしさや、味わい深いまとまった味になりやすくなります。
調味料を加えて中火で10分煮る。
基本的には砂糖と醤油のみですが、お好みに合わせてみりん、酒、ダシなどを加えることもあります。
個人的には醤油とみりんという組み合わせが、見た目も良く甘さも控えめで好きですが、自分の好みに合わせてみてください。
ちょっと弱めの中火で、落し蓋をして10分ほどぐつぐつと煮ていきましょう。
火を強めて軽く煮詰める。
食材に火が通ったら、落し蓋を取って一気に火を強めて煮詰めていきます。
ここで照りが出てくるので、ツヤツヤになるまで煮ていきましょう。
ただし煮汁がなくなるまで強火というのはやりすぎなので、鍋を振りながら絡めるように煮詰めてくださいね。
《筑前煮の調理時間》
筑前煮の場合は、里芋の下茹でなどの下ごしらえなどを含めても、30分~40分ほどで完成します。
下ごしらえに10分、里芋の下ゆでに5~10分、中火で10分、強火で5分ほどが目安になるでしょう。
先に里芋から切っておいて、ほかのものを切る間に茹でておくと効率が良いですよ。
ほかにも下処理のいるものからはじめると時短になりますね。
まとめ
いかがでしたか?
お煮しめと筑前煮の違い、同じように見えて、本当は違うものだということがお分かりいただけたでしょうか?
具材や味付けというのは、家庭や地域で差があるので必ずというわけではありませんが、本来の違いでいうと
- 煮しめ=汁気がなくなるまで弱火で煮詰める
- 筑前煮=煮る前に炒めて、強火で味を絡める
- お煮しめ=時間がかかる/筑前煮=比較的短時間で調理できる
ここが大きく違うポイントだったのではないでしょうか。
ということは、決定的な違いは「調理法」と「手間・時間」と言えるかと思います。
これからお煮しめや筑前煮を作るときには、このポイントに注意し、ぜひ味の違いを楽しんでみてくださいね。